EQBC2021結果発表

本年度、受賞された作品・アイデアを発表いたします。各作品・アイデアの詳細についてはエントリー者に公開を確認できたものに関して順次公開をしてまいります。

【作品・造形部門】

 

グランプリ 上川 宗光 break the mold 「常識の殻を破る」 有限会社 日伸貴金属
準グランプリ 岩木 誠 雪のネックレス アクセサリー作家

■ 審査員講評 ■

審査委員長 岩田先生より

上川 宗光さん 「break the mold 「常識の殻を破る」」・・・自身の経験からアレルギー症状を起こしにくい純銀という素材に着目され真摯な姿勢で制作に望まれている様子が伺えます。純銀は通常硬度が低く成型しづらく、接合時の温度で軟化してしまうという難点がありますが、作品を拝見した所、ジュエリーの機能としては使用に耐えうる硬度になっているようです。ただ、一般的に純銀は質量にもよりますが、時効軟化を起こすといわれたり、基本的に軟かい性質なので使用により凹みなどの傷が付くかもしれないかと思います。そのような難点の不安要素を解消できれば良いのと、造形の独自性をさらに主張されると良いと思います。

審査員 春田先生より

岩木 誠さん 「雪のネックレス」・・・これまでもフェルトのジュエリーはありましたが、本作品のポイントは組み替え可能であることですね。パーツの種類を増やす、カラーを増やす、素材を変える、など今後の発展に期待ができます。
暖かみのある素材なので、本作品では逆に冬のイメージをデザインしたと思われますが、四季を通して提案できる可能性を感じます。基本セットをシンプルにして価格を下げ、パーツのバラ売りを行えば、最初の購入者を増やすことができますね。組み替え方法が簡単なのでYoutubeで共有できることが画期的ですが、制作方法から組み替え方法に至るまで全てが簡単であるが故に模倣品が出る懸念があります。発売前に知的財産の保護対策もご検討ください。

【コンセプト部門】

 

グランプリ 土井 利次 KASI/KARI 東京都立産業技術大学院大学  創造技術コース
準グランプリ 嶋 秀幸 ハプテン金属イオンを捕捉・検知する機能を繊維材料に付与する新しい加工法 京都工芸繊維大学大学院 工芸科学研究科バイオベースマテリアル学専攻

■ 審査員講評 ■

審査員 丸山先生より

土井 利次さん 「KASI/KARI」・・・ジュエリーやアクセサリーは従来、物質的個人資産の核心とも言える物品であった。ジュエリーの装着者は自身がそのジュエリーを所有する財力や社会的地位にある事をアピールすることに価値を見い出す。本提案はそうした旧来のジュエリーの本質的存在意義に一石を投じる画期的提案である。社会におけるポジショニングの在り方の変化を感じさせるアイデアである。実現化して推進してもらいたい。

審査員 内田先生より

嶋 秀幸さん 「ハプテン金属イオンを捕捉・検知する機能を繊維材料に付与する新しい加工法」・・・体内たんぱく質と結合してアレルゲンとなるハプテン金属に対して、反応して色の変化を起こす物質を使って、アレルゲン金属との接触が目視でわかる布製(おそらく紙でも可能)センサーを開発した。繊維材料のセルロースとの結合法や酸性液での復活再利用の確認など、化学的なチャレンジは極めて面白い。アイデアと努力は高く評価したい。しかし、ニッケルのみの記載であり、それ以外のアレルゲン金属での色変化は不明である。また、アレルゲンは極低濃度、点状の微少面積でも発症する。目視での色の変化で誤差なく検出できるだけの検出感度を得ることは困難と考える。実用化までには多くのブレークスルーが必要であろう。

 

【クラウドファンディング賞】

 

クラウドファンディング賞 土屋 沙樹 stringuard 東京都立産業技術大学院大学 創造技術コース
クラウドファンディング賞 岩木 誠 雪のネックレス アクセサリー作家

審査員 照井先生より

 

【土屋さん】

新しいファッション、アクセサリーとしてユニークな視点で良いと思いました。金属アレルギーの課題も解決しながら、可愛らしさ、ユニークさ、印象に残るファッションとしても機能し、カジュアルな場面から少し上品な席でも活用できそうに思います。また、壊れたものを擦れるのではなくパーツを交換するというサスティナブルな視点もありつつ、自分で作ることもできるという、ソーシャルグッドな製品です。
思いやストーリー、魅力をPRできるクラウドファンディングとも相性が良いと感じました。

 

【岩木さん】

身近な金属アレルギーに関する課題、そして趣味として親しむ方も多い楽器を中心に考えており、多くの方がイメージを持ちやすい商品・企画だと思います。また、どんな人の課題を解決し、喜んでいただけるのかというターゲットを明確に定まっていることも良い点です。クラウドファンディングでは何をやりたいのか、実現したいのかという内容も大事ですが、どんな人たちが笑顔になってくれる取り組みなのかを考えることがさらに大事です。あったらいいなという商品を実現するための資金調達や、ニーズを検証するためのツールとして、クラウドファンディングを活用いただければ幸いです。

【レジエ賞】

 

レジエ賞 進藤 自由平 恋もファッションもサスティナブルに。ホワイトデー大作戦。 東京都立産業技術大学院大学 創造技術専攻

■ 審査員講評 ■

審査員 丸山先生

進藤 自由平さん 「恋もファッションもサスティナブルに。ホワイトデー大作戦。」・・・アクセサリーの直接ユーザになる女子高生ではなく男子に働きかける事によって浸透を促進する着眼に感銘をうけた。パーソナルカラー診断とパッチテストを組み合わせるアイデアも秀逸である。アイデアの作用点を男女の関係性に置く事で自ずから対話が生まれる仕掛けになっている点も評価に値する。金属アレルギーが話題に上がり関心事になって波紋を広げる事で社会的リテラシーが向上するはずである。

 

【ビジネスアイデア賞】

 

ビジネスアイデア賞 野田 量生 金属アレルギーの方でも、お好きな金属アクセサリーを着けられます 東京都立産業技術大学院大学 産業技術研究科

■ 審査員講評 ■

審査員 菊池先生

野田 量生さん 「金属アレルギーの方でも、お好きな金属アクセサリーを着けられます」・・・金属でできたアクセサリーが直接肌につかないようにするための工夫が、コーティングすることで問題を避けられる点に評価できる。具体的なコスト計算もあり、わかりやすい内容でした。しかし、それが本当にそうなるのか他の例を出していただければより具体的になったと思います。

 

【金属アレルギー協会賞】

 

金属アレルギー協会賞 栗田 結帆 LINEを用いたアクセサリーのレビューサービス 千葉大学 工学部総合工学科デザインコース

■ 審査員講評 ■

審査員 丸山先生

栗田 結帆さん 「LINEを用いたアクセサリーのレビューサービス」・・・様々なリサーチをもとに形式としては販売・情報(口コミ、商品内容)・コミュニケーションサイトを融合し、アイテムや目的に対し明快に特化され実現可能な内容であることを伺えます。また、ジュエリーを生産する者にとって若年層からジュエリーを使用する習慣が身に付くなどの期待を持て啓蒙的要素も好感が持てます。ただ画面のデザイン・構成も含め、年齢層別に様々なアイテムが見られるなど若年層以外のコンテンツも含むなど、ジュエリーの持つイメージを尊重されるとさらに良いかと思います。